椙山女学園大学 食育推進センター

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2022-07-13

第45回椙山フォーラム「腸活」視聴者からの質問に対する回答について

過日に行いました第45回椙山フォーラム「腸活」は、歴代最高人数の方にお申込みいただき、「腸活」への関心の高さをうかがい知ることができました。ご視聴いただきありがとうございました。
申込時および視聴後のアンケートにていただきました質問につきまして、回答できる内容のみ、講師からお答えさせていただきます。

【質問1】
①生きて腸まで届く乳酸菌とそうでない乳酸菌とでどのような効力の違いがあるのでしょうか。例えば、ストレス緩和や睡眠向上は生きてとどかないと発揮されないものなのでしょうか。脳腸相関が発揮されるのは、生きて腸までとどくということが重要なのでしょうか。
②同じカゼイ菌でも生きて腸に届く株とそうでない株があり、つまるところ、効力は同じ種類(学名)でも特定の株に依存しているということでしょうか。
③生きて腸まで届く乳酸菌とビフィズス菌とでは何か決定的に違う効果がありますか。
⇒①両者を比較していませんので正確なことはわかりませんが、腸にとどいた乳酸菌 シロタ株は、迷走神経(腸と脳を結ぶ神経のネットワーク)を刺激し、過剰な交換神経の興奮を抑えると考えられ、その作用は乳酸菌 シロタ株の数と容量あたりの菌の多さ(我々は高菌数・高密度と呼んでいます)が関係することを示唆する研究データがあります。
②おっしゃるとおりです。同じ「種類(学名)」の中には、人の健康に役立つ機能が認められるなどの際立つ特性をもつ菌が存在します。一般的には、属・種・株に分類され、株が違えば、特性も違います。
③生きて腸までとどく乳酸菌もビフィズス菌も、腸の中で悪い菌の増殖を抑える乳酸をつくり、腸によいはたらきをします。ビフィズス菌は、酸素を極端に嫌う菌で、乳酸以外にも酢酸をつくります。これらの菌の仲間は人の腸にもすみついており、乳酸菌は主に小腸下部から大腸にかけて、ビフィズス菌は主に大腸に生息していることから、それぞれの仲間のすみかではたらくと考えられます。(有馬講師)

【質問2】
生きた乳酸菌と死んだ乳酸菌は免疫を上げるには、どちらの方が効果があるのでしょうか。
⇒生きた乳酸菌は、乳酸、酪酸、酢酸などの有機酸を作り出し腸内を酸性に保ち、善玉菌が増えやすい環境を作ります。死んだ乳酸菌も善玉菌のエサになり、善玉菌を増やす働きがあると言われています。善玉菌が増える事で免疫力が高まりますので、生きた乳酸菌も死んだ乳酸菌も、どちらも効果があると考えられます。(及川講師)

【質問3】
ヤクルトの宅配を頼んでいるが、何時に飲むと効果的か?腸の不調の気付き方は?日頃から便秘気味なので心配です。
⇒食品ですので、基本的にいつお飲みいただいてもかまいません。なお、乳酸菌 シロタ株は強化培養された菌のため、いつお飲みいただいても、生きたまま腸にとどきます。
腸の状態を把握するわかりやすい指標として、日々のお通じのチェックがあります。便のにおいは腸内環境の良し悪しを探る手がかりになりますし、腸内で出血があればお通じの色は大切なサインとなります。また便秘気味ということでしたら、便の形のチェックもおすすすめします。便の水分量によって、「コロコロ状」「カチカチ状」「便がひび割れたカチカチ状」「理想的なバナナ状」の便を判別することができます。(有馬講師)
【参考】ヤクルト中央研究所HP「健康用語の基礎知識:ブリストール便性状スケール」

【質問4】
乳酸菌飲料の乳酸菌は消化管へどのくらいの割合で到達するのか。強酸性の胃で減ることはないのか。
⇒我々は、他の乳酸菌と「乳酸菌 シロタ株」を見分ける技術をもっているため、口から摂取した「乳酸菌 シロタ株」が便の中に検出されるかを確認し「生きて腸にとどく」ことを証明しています。人によって食習慣や胃液や胆汁の分泌量、腸内細菌の構成が異なるため、摂取した乳酸菌の何パーセントが腸に到達するか明確な数値を示すことはできませんが、食文化の異なる海外の人でも「生きて腸にとどく」ことは証明されており、また個人差はありますが、飲んだ菌の数が多いほど便から検出される「乳酸菌 シロタ株」の数が多くなることも確認しています。(有馬講師)

【質問5】
腸内細菌善玉菌と悪玉菌そして日和見菌の割合が2:1:7とされています。赤ちゃんの時はビフィズス菌が95%だったものが、日和見菌が7となるのはどうしてでしょうか?日和見菌の食品をとることは大切でしょうか?日和見菌は酸には強いのでしょうか?
⇒赤ちゃんは、お母さんのお腹の中では無菌に保たれていますが、母体の産道を通って産まれる瞬間に細菌にさらされます。出生後24時間以内に大腸内では大腸菌や腸球菌などが増え始めますが、生後3~4日目頃には、ビフィズス菌、乳酸桿菌が増殖を開始し優勢になり、大腸菌、腐敗菌などは減少して腸内は安定します。乳児期にビフィズス菌が多くなる理由は、母乳中に含まれるオリゴ糖がビフィズス菌の栄養成分になるからです。離乳食が始まると食事などから摂り込まれる他の菌の割合(バクテロイデス、ユバクテリウム、嫌気性レンサ球菌など)が多くなり、この時期に腸内フローラが安定する言われています。日和見菌を積極的に摂るというよりは、日和見菌が悪玉菌として働かないよう善玉菌が棲息しやすい酸性環境を保つ事を心がけると良いと思います。(及川講師)

【質問6】
腸内細菌の日和見菌の中で、バクテロイデスと痴呆は、深く関係があるそうです。 バクテロイデスを含む食品を教えてください。
⇒バクテロイデスは日本人の腸内に多い細菌で日和見菌として分類されていますが、最近では腸管免疫で重要な働きをすることが分かってきています。最近、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターのグループにより、バクテロイデスが多い患者は、そうでない患者に比べて認知症の罹患率が低くなったと報告されています。また、バクテロイデスとの関連は不明ですが、認知症のない人は認知症の人より日本食スコアが高く、魚介類・きのこ・大豆・コーヒーを多く摂取しており、これらの食品摂取が多いと腸内細菌の代謝産物濃度(腸内有害菌が作る発癌促進物質)が低い傾向であったと報告されています(参考:国立長寿医療研究センターWebサイト)。日本の伝統的な食品を習慣的に食べていると、バクテロイデスの割合が多くなるのではないか、と推測されています。(及川講師)

【質問7】
腸内フローラの移植は、実現されているのでしょうか?
⇒健康な人の便を移植する腸内細菌叢移植 Fecal Microbiota Transplantation(FMT)が一部で行われています。ただし、その方法はまだ確立されておらず、臨床研究段階ですので、保険適用もされていません。アメリカでは感染症による死亡例も報告されており、一般的な治療法になるにはもう少しかかるのではないかと思われます。(唐木講師)
⇒医療機関で実施され始めているようです。(及川講師)

【質問8】
腸と自律神経は関係があると聞いていますが、その点を詳しくお教え願います。
⇒腸の神経系は、自律神経の一種です。自律神経というと、戦う体制をつくる交感神経と休息をもたらす副交感神経の二つが知られていますが、腸の壁内に存在する「腸管神経系(唐木の講演で腸の中脳と表現した神経系です)」は、私たちが意識しなくても自動的(自律的)に働いていることから、第三の自律神経系と言うことができます。そして、副交感神経系の一部と考えることもできますが、腸管神経系は、単純に副交感神経系の一部というだけではない腸管における中枢神経系としての機能を持っていると解説させていただきました。しかし、私たちの意識とは関係なく働いていることから、腸管神経系は「自律神経系」の一種、ということになります。(唐木講師)

【質問9】
小学生の子供が緊張しやすく、よく腹痛になったり快便にならなかったりするそうです。何か家庭でできる手立てなどありましたら、ぜひ教えて下さい。
⇒腸内細菌は、脳と腸をつなぐ神経性の経路を介して、ストレス応答や行動特性へ影響することが明らかになってきています。そのため、普段から腸内フローラを整える食生活を心がけると良いと思います。腸内フローラを整えるためには、食事だけでなく、適度な運動、睡眠も重要です。(及川講師)

【質問10】
家族が下痢になったり便秘になったり排便の日数がバラバラな状態なんですけど、腸が悪いのですか?
⇒腸内フローラのバランスの崩れが原因かもしれません。脂やたんぱく質の多い食品ばかり食べていると、それをエサとする悪玉菌の割合が高くなり、腸内がアルカリ性に傾き炎症を引き起こし、下痢の原因になると考えられます。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は腸内の悪玉菌や腸内の腐敗産物を減少させおなかの調子を整えているといわれています。また、善玉菌により腸内で生成される酢酸は大腸の運動を刺激することやバリア機能を強固にすること、炎症を抑えることが報告されています。(及川講師)

【質問11】
更年期以降、腸の動きが鈍くなっています(57歳)。ヨーグルトや寒天なども食べるようにして便秘対策をしています。薬に出来るだけ頼らない便秘対策を教えて下さい。また、超高齢者(95歳)の便秘対策も教えて頂けると嬉しいです。
⇒ヨーグルト以外にも味噌や納豆などの発酵食品や食物繊維を豊富に含む食品(切り干し大根、ごぼう、キノコ類など)を取り入れて、バランスの良い食事を心がけるといいと思います。ご飯を白米から玄米に変えることも効果的です。また、腸内環境を整えるためには食事だけでなく、適度な運動や睡眠も必要です。(及川講師)

【質問12】
便秘になりやすい人となりにくい人の差は何ですか。そして、便秘の人の方が太りやすいですか。
⇒便秘になりやすい人となりにくい人の差の原因の一つとして、その人の持つ腸内細菌叢の違いがあると考えられます。腸内環境を良くするためには、ビフィズス菌や乳酸菌を積極的にとり、それらの菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を含む食事を習慣的に摂るとよいとされています。また、大腸のぜん動運動を促すためには、運動も必要です。便秘になると胃腸の働きが鈍くなり、また新陳代謝が低下することにより脂質や老廃物がため込まれやすくなり、太る原因になると考えられています。(及川講師)

【質問13】
毎日10の食品群をなるべく食べるように心掛けていますがよく下痢します。痩せ気味です。
⇒下痢の原因が腸内フローラの乱れによるのであれば、腸内環境を整えるために10の食品群のうち乳製品であればヨーグルトや乳酸菌飲料など乳酸菌を含むもの、野菜ならオクラやモロヘイヤ、ごぼう、かぼちゃなど食物繊維を豊富に含むもの、果物ならバナナやキウイ、リンゴなどオリゴ糖を豊富に含むものを選ぶといいと思います。また、ご飯は、白米より玄米の方が食物繊維が多いのでおすすめです。(及川講師)

【質問14】
軟便は病気でなければ、どんな食事の影響ですか。
⇒腸内フローラのバランスが崩れ、ウェルシュ菌など悪玉菌が増えると、有害物質が生成され下痢や便秘の原因となります。ウェルシュ菌は、たんぱく質や脂質が中心の食事で増加すると言われています。野菜や穀類の少ない、お肉が中心の食事が影響することが考えられます。(及川講師)

【質問15】
腸が喜ぶとっておきのオリジナルレシピを少し紹介してください。
⇒下記レシピをご参照ください。(及川講師)
 >>腸が喜ぶレシピ

【質問16】
アルコールを止めたり、休肝日を設けることがとてもむづかしいのでのが、それを前提にして、腸活からみて、どうアルコールと付き合っていけばよいですか。
⇒私も好きな方なので、難しいですよね。(唐木講師)
⇒アルコールが腸内フローラのバランスを崩す原因として、アルコールが代謝される際に発生する活性酸素が善玉菌に影響することが考えられています。脂っこい食事は悪玉菌を増やす方向にはたらくため、お酒を飲むときは脂っこいものや塩辛いものを控え、野菜や海藻類、また、お肉ではなく魚や豆腐を一緒に食べるといいと思います。野菜には様々な抗酸化成分が含まれており、さらに善玉菌のエサとなる食物繊維も豊富に含まれています。(及川講師)

【質問17】
腸と腎臓の関係を教えてください。
⇒腸管を介して「内部環境」に取り込まれた物質は、「内部環境」で様々な変化「代謝」を受けていわゆる老廃物となり、基本的には腎臓から尿として排出されます。様々な要因で腸粘膜バリア機能の低下が起こると、本来生体内に取り込んではいけないものが生体内に取り込まれ、腎臓を含めた様々な器官で炎症が引き起こされると考えられています。腎臓の慢性炎症によって腎臓の老廃物排出機能が低下した慢性腎臓病の状態では、本来尿として排出されるべき老廃物(尿毒素)が生体内に蓄積することになります。そして、尿毒素は腸管のバリア機能を低下させることも報告されています。つまり、ここにも腸バリア機能低下⇄慢性腎臓病悪化という悪循環が存在します。したがって、腸内環境を改善し、腸粘膜バリア機能を高めることはこの悪循環を断つことにつながります。もちろん慢性腎臓病には様々な原因があり腸内環境の改善だけで治療できるものではありませんが、慢性腎臓病の緩和には有効かもしれません。(唐木講師)

~番外編【質問】~
講演会(栄養指導など)を行う際、聞いている側が分かりやすいように、興味をもってくれるように意識していることはなんですか。
⇒私は基礎研究者なので臨床現場に立つことはないのですが、講演会や学生に対する講義の際に興味を持ってもらえるように準備することは、聴衆の世代に共通する話題を盛り込むことでしょうか。(唐木講師)
⇒テーマ(伝えたいことは何か)、トータルの時間をまず確認するようにしています。さまざまなことをお伝えしたい気持ちは抑え、全体の構成の中でポイントを絞って「伝えたいこと」がしっかりと描けているかを心掛けるようにしています。講演では、自分の言葉で伝えること、難しい話の中にも自分事として感じていただける「たとえ話」を適宜加える工夫も意識しています。(有馬講師)
⇒関係する最近の話題に触れたり、身近なものに例えて話をしたりしています。(及川講師)



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